アパートの賃貸借契約を締結する際、敷金として、家賃2か月分計10万円を支払いました。このアパートを退去するので、敷金10万円の返還を貸主に求めたところ、貸主は「原状回復費用として10万円以上かかったので、敷金は1円も返せない」と言ってきました。故意過失による汚損はありませんし、経年変化や通常損耗を借主の負担とする特約もないため、貸主の主張は間違っていると思いますが、私が交渉しても進展がありません。どうすれば良いでしょうか。
敷金返還の交渉が行き詰まった場合には、内容証明郵便で請求書を送付することにより、敷金を返還してくる可能性があります。
それでも返還を拒まれた場合には、少額訴訟を提起する方法が考えられます。少額訴訟では、60万円以下の金銭の支払について、原則1回の裁判期日で判決が言い渡されます。
なお、少額訴訟を提起した場合であっても、被告が通常裁判による審理を希望した場合や、少額訴訟の判決に異議を出した場合には、通常の裁判に移行することになります。
敷金とは、賃貸物件を借りる際に、未払い賃料や原状回復費用などの債務を担保するために、借主から貸主へ預けるお金のことです(民法622条の2第1項)。
預けたお金なので、契約終了(退去)時には貸主から借主に対し、債務を差し引いた金額を返還しなければなりません。借主が負担すべき債務が何もなければ、有効な特約がない限り、貸主は敷金全額を返還すべき義務を負います。
それにもかかわらず、貸主が「原状回復費用が発生している」などと主張し、敷金を返してくれないケースが多発しています。
法律上、原状回復費用は借主負担になるものと、貸主負担になるものとがあります。
具体的にみていきましょう。
従前から原状回復費用をめぐるトラブルが頻発していたため、国も原状回復義務の範囲を明確化するために動きました。
具体的には、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表し、次いで、民法改正によって原状回復義務の範囲が明文化されました。
2020年4月1日に施行された改正民法の621条では、通常損耗(通常の使用および収益によって生じた賃借物の損耗)と経年変化(いわゆる経年劣化)については、賃借人に原状回復義務はないと定められています。
改正民法の規定は抽象的な表現にとどまりますが、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復費用を借主が負担すべきケースと、貸主が負担すべきケースの具体例が掲載されています。
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、以下の損耗は借主の故意または過失によるものであり、借主が原状回復義務を負うものとされています。
自分では「故意・過失による汚損はない」と考えていても、うっかり(過失)でできた汚損がないとも限りません。一度、室内をくまなくチェックしてみましょう。
以下の損耗は、経年劣化または通常損耗に該当し、貸主が原状回復義務を負うものとされています。
なお、原状回復費用を借主負担とする特約が賃貸借契約書に記載されているケースも多いですが、この特約は一定の条件を満たさなければ無効となり、原則どおり、貸主が原状回復義務を負うことになります。
借主負担となる原状回復費用がないにもかかわらず、貸主が敷金を返してくれない場合は、敷金返還請求をすべきです。
まずは貸主や管理会社と直接交渉することになりますが、交渉が行き詰まったときは泣き寝入りせず、以下のように対処していきましょう。
交渉で埒が明かない場合は、内容証明郵便で敷金返還請求書を作成し、貸主や管理会社へ送付することが有効です。
この請求書には、以下の事項を明記します。
内容証明郵便に法的な強制力はありませんが、こちらが本気であることを示すことができ、相手も心理的なプレッシャーを感じることが多いです。内容証明郵便を送付するだけで敷金を返してきたり、真剣に話し合いに応じてきたりすることもあります。
内容証明郵便を送付しても敷金を返してもらえない場合は、少額訴訟を提起する方法が考えられます。少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払について、簡易裁判所で原則1回の裁判期日で審理を行い、即日判決が出るという簡易な裁判手続です。
借主が負担すべき債務がないことが裁判所で認められると、借主勝訴の判決が言い渡され、2週間以内(判決書の送達を受けた日から起算)に貸主が異議を申し立てなければ判決が確定します。
判決後も貸主が敷金を返還しない場合には、強制執行手続きにより貸主の財産を差し押さえて、強制的に回収を図ることも可能です。
なお、少額訴訟を提起しても、被告が通常裁判による審理を希望した場合や、少額訴訟の判決に異議を出した場合には、通常の裁判に移行することになります。
通常の裁判は少額訴訟よりも手続きが複雑で、時間も要しますが、勝訴判決が確定すれば強制的に金銭の回収を図ることが可能となる点は同じです。
ここまで、自分で敷金返還請求をする方法をご紹介してきましたが、貸主や管理会社との交渉が決裂した際には、一度、弁護士に相談してみることをおすすめします。交渉のポイントや内容証明郵便の書き方、少額訴訟の手続きなどについて、専門的なアドバイスが受けられます。
敷金返還請求を弁護士に依頼し、すべての手続きを一任することも可能です。
弁護士名義で内容証明郵便を送付すれば、貸主側が「自分の主張は法的に通らない」、「これ以上の紛争化は避けたい」などと考え、敷金を返還してくる可能性が高まります。すぐに返還してこないとしても、弁護士が間に入り論理的に交渉することで、和解が成立することもあります。
法的手続きが必要となった場合には、弁護士が少額訴訟や通常の裁判の手続きを全面的にサポートしてくれますので、納得のいく結果が期待できます。
敷金返還請求ができるかどうかを確認するためにも、まずは一度、弁護士にご相談ください。

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まずはお電話かメールでご予約をお取りください。法律相談をしても必ずしもそのまま依頼しなければいけないという事はありません。

弁護士が直接事情や状況を伺います。ご相談の際には内容をまとめたメモや資料などをお持ちになる事をお勧めいたします。相談のみで解決した場合はこれで終了となります。

相談時に、事件をお受けする場合の報酬や経費などのご説明もいたします。その上でご希望の場合は依頼をしてください。持ち帰ってご検討いただいても構いません。


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