借地権を譲渡したいと地主に相談したところ、そこそこの額の承諾料を求められました。承諾料の相場はいくらくらいなのでしょうか。
裁判所が判断する場合の承諾料の相場としては、首都圏であれば借地権価格の約10%程度であると言われています。
その借地権価格は、土地の価格に借地権割合を掛けて算出されます。借地権割合は、国税庁の路線価図に記載されており、土地価格の3割から9割など、地域や土地の価格によって変わってきます。
なお、借地権価格の計算方法は、借地権の種類によって異なることもあります。
民法第612条第1項で、「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない」と定められています。賃貸借契約は、賃貸人と賃借人との間の長期間にわたる信頼関係に基づいており、賃貸人にとって「誰に貸すか」は重要な問題であるため、借主が無断で第三者に賃借権を譲渡することは認められていないのです。
借地権が土地の賃借権である場合(建物所有目的の借地権の多くはこれに当たります)には、譲渡する際に地主の承諾が必要となります。
承諾料の支払い義務が法律で定められているわけではありませんが、地主は新たな借地人と信頼関係を構築しなければならず、将来の地代未払いなどのリスクも新たに負ってしまうことから、実務上、借地権の譲渡には承諾料の支払いが必要とされています。
承諾料の額は、地主と借地人との協議(合意)によって決まるものであり、法律で定められているわけではありません。
しかし、長年の慣行から、おおよその相場が形成されています。
借地権を第三者に譲渡する場合の承諾料の相場は、「借地権価格の10%程度」です。
ここで注意が必要なのは、「更地価格」ではなく、「借地権価格」の10%程度であるという点です。
したがって、承諾料の額は、借地権価格によって大きく左右されます。
借地権価格は、次の計算式によって算出します。
借地権価格=更地価格(その土地の評価額)×借地権割合
更地価格は、路線価図を参照して概算するのが一般的です。路線価とは、相続税や贈与税の計算のために国税庁が定める、道路に面する標準的な土地の1平方メートルあたりの価格のことであり、国税庁が毎年7月に全国の路線価を公表しています。ただし、路線価は地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定められているため、路線価に面積を乗じただけでは、実勢の更地価格よりも低い金額になるのが通常です。承諾料の目安を試算する際には、路線価を0.8で割り戻して公示価格水準に補正したうえで、近隣の取引事例なども踏まえて更地の時価(実勢価格)を推定する必要があります。実際の借地非訟手続においても、承諾料は路線価そのものではなく、鑑定委員会(借地借家法47条)の意見等を踏まえた更地の時価を基礎として定められるのが通常です。
借地権割合とは、土地の更地価格のうち、借地権の価値が占める割合のことです。対象となる土地の権利のうち、借地人が持つ割合を「借地権割合」、残りの地主が持つ割合を「底地割合」と呼びます。借地権割合と底地割合は、合計して100となります。
路線価と借地権割合は、国税庁の「財産評価基準 路線価図・評価倍率表」で確認できます。
それでは、実際に借地権譲渡の承諾料を計算してみましょう。
| 路線価 | 20万円/㎡ |
|---|---|
| 土地面積 | 120㎡ |
| 更地価格 | 25万円/㎡(路線価20万円÷0.8)×120㎡=3,000万円 |
| 借地権割合 | 60% |
このケースで、相場(借地権価格の10%)に従って計算すると、承諾料の目安は
借地権価格:3,000万円×60%=1,800万円
承諾料:1,800万円×10%=180万円
なお、借地権割合は一般的な住宅地で50~60%が標準的です。しかし、都心部や商業地では借地権割合が70~90%となることも多く、更地価格も高くなる傾向にあります。そのため、承諾料も高額になりがちです。
逆に、郊外や農村部などでは借地権割合が30~40%となることが多く、更地価格も低いことが多いため、承諾料も低額となる傾向にあります。
借地権を譲渡する際に100~200万円の承諾料を求められると「高い」と感じるかもしれませんが、一般的な住宅地では相場どおりであることも多いものです。地主と交渉する際には、上記の方法で承諾料を試算し、適正な価格を確認しておくことが大切です。
承諾料の相場は「借地権価格の10%程度」ですが、これはあくまで目安です。実際には、さまざまな要素によって承諾料の適正価格が上下します。
承諾料の額を左右する主な要素として、以下の5つが挙げられます。
これまで支払ってきた地代(土地の賃料)が周辺相場に比べて著しく低い場合には、地主から「これまで安く貸してあげていたのだから、譲渡の際には相応の承諾料をもらいたい」と主張され、高めの承諾料を要求されることもあります。
逆に、十分な金額の地代を支払ってきた場合には、相場どおり、あるいは相場より低めの承諾料で済むこともあります。
借地契約の残存期間がどれくらい残っているかも重要です。
契約期間の満了が間近に迫っている場合、譲渡承諾料と同時に「更新料」の支払いを求められるケースがあります。この場合、名義変更料と更新料が合算されて「承諾料」が算出されるため、結果的に高額の承諾料を提示されることがあります。
地主にとって「誰が新しい借地人になるか」は極めて重要な関心事です。新たな借地人の資力や社会的信用が高く、地代の不払いや近隣トラブルの心配がない人物であれば、相場を超えない金額の承諾料で収まりやすいです。
逆に、新たな借地人の信用力や人柄に問題がある場合には、相場より高めの承諾料を求められる可能性が高く、場合によっては承諾を拒否されることもあります。
借地権取引の慣行は地域によって異なります。
大都市圏では承諾料が高くなる傾向があり、一方で地方や過疎地では低くなる傾向があります。
その他にも、地域によっては独自の取引慣習が存在することがあり、過去の取引実績を参考にして承諾料の額を定めるケースもあります。この場合、一般的な計算方法で算出した金額とはかけ離れていても、その地域では承諾料の適正額として認められることがあります。
承諾料の額は地主と借地人との合意で定めるものであるため、両者の関係性は重要な要素となります。
日頃から円滑にコミュニケーションをとり、長年にわたって良好な関係が築けていれば、双方が納得する金額で円満に協議がまとまりやすいです。
逆に、地代の増額・減額をめぐる紛争などで対立していたり、借地人が近隣トラブルを起こしていたりして関係が冷え込んでいる場合には、地主が感情的になり、相場を無視した高額な承諾料を要求してくることもあります。
地主から相場より高額の承諾料を請求されたとしても、泣き寝入りする必要はありません。とはいえ、感情的に対立しても問題は解決しません。
適正な額の承諾料で借地権の譲渡を実現するためには、以下のように対処していきましょう。
まずは、地主に対して、どのような根拠でその請求額になったのかを尋ねましょう。
地主が承諾料の一般的な計算方法を知らないケースや、知っていても最新の路線価を確認していなかったり、誤って「更地価格×10%」で計算したりするケースも少なくありません。
また、更新料や未払いの地代が加算されているケースも多いですし、なかには地主が契約の更新を望んでいないケースも見受けられます。
いずれにせよ、請求額の根拠を明確に確認することで、交渉の糸口が見つかるはずです。
承諾料の交渉をする際には、弁護士や地元の不動産業者など、借地権に詳しい専門家を介して話し合うことをおすすめします。
当事者同士の話し合いでは、専門的な知識が不足していたり、感情的になったりして交渉が平行線になりがちなケースでも、専門家を間に入れ、路線価や判例など客観的なデータに基づき論理的な交渉することで、妥当な金額での合意が期待できます。
どうしても地主と合意できない場合は、借地非訟の申立てを検討しましょう。
借地非訟とは、賃借権の譲渡について、裁判所が地主の承諾に代わる許可を出す特別な裁判手続きです(借地借家法19条1項)。なお、この申立ては、借地上の建物を第三者に譲渡する「前」に行う必要があり、譲渡してしまった後に申し立てることはできません。借地権の譲渡が許可される場合は、通常、裁判所が承諾料の金額も定めて、借地人に対して支払いを命じます。
裁判所は、借地権の残存期間や、借地に関する従前の経過、借地権の譲渡を必要とする事情、その他一切の事情を総合的に考慮して、借地権譲渡の許否や承諾料の金額を判断します。
最後に、借地権を譲渡するにあたって、承諾料をめぐるトラブルを防止するために注意すべきポイントについて解説します。
地主と良好な関係であっても、口約束のみで承諾料のやりとりをすることは大変危険です。後から地主の気が変わったり、承諾料の金額で「言った・言わない」の争いになったりするリスクがあります。
合意ができたら、必ず、承諾料の金額と内訳を明記した書面(借地権譲渡承諾書)を作成し、地主に署名・捺印してもらいましょう。内訳については、名義変更料の他に更新料や未払い賃料なども含むのか、含む場合には費目ごとの金額まで明確に記載してもらうことが必要不可欠です。
借地権の譲受人が住宅ローンを利用する場合には、金融機関が借地上の建物に抵当権を設定します。このとき、法律上は地主の承諾は不要ですが、実務上、金融機関は融資の条件として地主の承諾を求めます。
もし、この事情を地主に事前説明せずに譲渡を進め、後から譲受人が融資を受けられなくなった場合、譲受人も巻き込んだ大きなトラブルに発展するおそれがあります。
トラブルを回避するためには、譲受人の住宅ローン利用について事前に地主に説明して理解を得て、それを前提とした額の承諾料を支払うことが大切です。
借地権を有償で譲る(売却)場合や、無償で譲る(贈与)場合には承諾料が必要ですが、次の2つのケースでは承諾料が不要です。
ただし、相続が絡むケースでも、遺言で借地権を贈与する(遺贈)場合や、法定相続人が取得した借地権を第三者に譲渡する場合には、承諾料が必要となります。
承諾料が不要なケースであるにもかかわらず、地主が勘違いをして承諾料を請求することも珍しくありません。借地権を譲渡する際には、承諾料の要否や金額の目安について弁護士にご相談の上、確認した方がよいでしょう。
借地権譲渡の承諾料の相場は「借地権価格×10%程度」ですが、実際の金額は、さまざまな要素によって左右されます。かつ、適正な金額で地主と合意するためには、借地権に関する専門的な知識だけでなく、交渉力も要求されます。
当事務所では、借地権に関する問題についても数多く取り扱っています。もし、借地権譲渡の承諾料の相場が分からず不安な方や、地主との交渉がスムーズに進まずお困りの方は、鎌倉総合法律事務所へ是非ご相談ください。

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