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近隣トラブル

私道ってどういうときに通れるの?

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購入を検討している宅地が私道にしか面していません。私道ってどういうときに通れるのでしょうか?

公道と私道

基本的に道路には、公道と私道という区別があります。

公道は国や県、市などの行政機関が保有・管理しているもので、これらの道路は自由に行き来することができます。

これに対して民間(個人や法人)が所有し、管理を行っている私道は原則、道路の所有権を持たない人間の利用が禁止されることになります。もっとも、世の中には、私道にしか面していない土地は沢山存在しており、こうした土地の所有者が私道を通行するために、通行権というものが問題になります。

通行権の種類

公道に出るために他人の私道を通らざるを得ない場合、私道の所有者がその通行を妨害することがあります。私道は私有地ですので、ここを通行するには、原則として、土地の所有権を有しているか、または、通行権が必要となります。公道に出るために私道を通らざるを得ない土地を持っている人は、その私道に対して所有権を持っていない場合であっても、何らかの通行権を持っているのが通常です。

法律では、その通行権として、通行地役権、契約による通行権、囲繞地通行権の三つを定めており、裁判例で、通行の自由権というものも認められています。

そこで、以下、これらの通行権について順に説明していきます。

1. 所有権

所有権を法律的に説明すると「物を全面的支配し、自由に使用・収益・処分出来る物権」(民法206条)ということになります。

この説明からも分かる通り、私道について所有権を有していれば、土地の使用として、私道を通行することはもちろん、掘削から占有まで、自由に行えることになります。ただし、私道となっている土地の所有権を一人で所有しているならば問題はありませんが、複数の人で私道の所有権を持ち合っているケースもあります。もちろん、私道の所有権の一部を有している訳ですから、通行権自体は持っていることになりますが、ここで問題なのは他の道路所有者との関係ということになります。

例えば配管するための掘削工事を行う際どうするのかとか、私道の管理をどうするのかということが問題になります。そこで必要となるのが、所有者全員で同意した道路管理の約束事ということになります。

もし、宅地を購入する際、私道部分が共有の場合には、どのような取り決めがあるかについては確認しておいた方が安全ということになります。

2. 通行地役権

所有権の次に確実な通行権となるのが、通行地役権と呼ばれる権利です。

地役権とは、簡単に言えば「自分の土地を利用するあたり、他人の土地を利用しなければならない事情がある時に土地に設定できる権利」ということになります。この通行地役権は、登記も可能な権利となりますから、所有権に次いで強力な通行権といえます。この通行地役権の設定にあたっては、自動車の通行や掘削についても取り決めを行っておくのが望ましいと思います。

また、法律上は地役権を主張するには「登記が必要」と書かれていますが、判例を見ると「例え登記がされていなくとも、土地所有者が外観上地役権の設定を予測出来れば足りる」としていますから、無登記でも既に私道が道路として使用されていることが明らかであり、長年実際に利用されている場合には、地役権が認められることもあります。

3. 契約による通行権

契約による通行権は、私道の所有者と通行について約束し、権利を与えてもらうことで発生する通行権ということになります。約束の内容によって通行権もいろいろあり、賃貸借契約や使用貸借契約、または、通行承諾というものがあります。

賃貸借契約の場合には、私道部分を賃料を支払う代わりに、土地を借り受けるということになります。賃貸借契約はその土地を借り受けることになるため、借り受けた人だけが使うことができることとなります。使用貸借契約の場合には、土地を借り受けるという意味では賃貸借契約と同じですが、賃料の支払いがなく、無償で借り受けることになります。

そして、一番多いのが通行承諾ということになりますが、これは私道の所有者から通行を承諾してもらう契約を締結することで発生する通行権です。この通行承諾には、お金を支払うケースも支払わないケースもありますが、賃貸借契約や使用貸借契約による通行権と異なるのは、賃貸借契約や使用貸借契約の場合には土地を借り受けて、自分たちだけが私道を通行・利用できるのに対して、通行承諾の場合には通行を承諾されているだけのため、私道の所有者を含め、他の人も私道を利用できるという点が異なることになります。

これらの契約による通行権の場合には、その通行権がいつまで与えられているのかその期間については注意が必要となります。宅地として利用するには基本的にはずっと通行権を確保する必要性がありますので、そのような内容になっているか、そうでない場合には契約が終了するときには他の手段で通行権が確保できるのかについては確認する必要があります。

4. 囲繞地通行権

囲繞地通行権とは、公道に直接通じていない土地(これを「袋地」といいます。)の所有者が、その袋地を囲んでいる土地(これを「囲繞地」といいます。)を、その所有者の承諾なしに公道まで通行できる権利をいいます。

囲繞地通行権が認められるためには、①「袋地」が直接公道に通じていない土地でなければなりません。また②「袋地」が他人の土地によって囲まれていなければなりません。また、囲繞地通行権が認められた場合でも、通行者は、囲繞地の損害に対して、原則として償金を支払わなければなりません。

5. 通行の自由権

通行の自由権とは、判例上、私道のうち建築基準法による道路位置指定を受けたものやみなし指定道路(いわゆる42条2項道路)について、開設済みの通路部分の通行が妨害された場合に、隣接者などその利用が日常生活上必須である人に認められる権利です。

この通行権も、他人の所有地を通行する権利である以上、簡単に認められるわけではありません。その具体的な内容や要件については、いろいろ議論がなされているところですが、少なくとも、通行者にとってその通行が日常生活上不可欠であることや、その通行が私道所有者に著しい損害を生じさせないということが要件とされています。

6. 最後に

それぞれに権利の強さや、利点・問題点がありますが、公道に接していない土地を買うとか、既に持っているなら、少なくとも私道に所有権(共有持分でも構わない)か地役権は取得しておく方が安全でしょう。宅地を購入する際には、公道への通行権が確保されているかどうかも重要なチェックポイントとなります。わずかな共有持分であれば、それなりの対価さえ払えば売ってくれる地主も多いはずですから、交渉してみて下さい。

普段問題なく、私道を通行できていると意識することはあまりないかもしれませんが、いざ相続や土地の売買などという場面で、土地の通行権をはっきりさせなければならなくなり、そのときに私道の所有者との関係で紛争になることがあります。

自分の土地の通行権についてよく分からない、土地を買おうと思っているが私道に対する権利がどうなっているか分からないと思ったときには、弁護士に相談してみてください。

当事務所では、私道のご相談を受けたときには、法務局に備え付けられている図面や、現地の状況、土地の売買契約書などの書面などから通行権の有無を判断した上で、地主との交渉や訴訟を行うことをお手伝いしています。

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